悪ノ人生‐ミチ− 第九話 So, we are twins.


リンアン:ri    灯世

レオン:re    りゅーが

サリ―:sa   じゅら

ガクト:ga   吉沢在玉


ルナ:ru     りった

アシュレイ:as  白黒  

メイリー:me    おもめ


ゼロ : ze    うたつき

カイン:ka   鳴海純

ハイク:ha   柏木まあさ

城のメイド:wo  椎名円子

兵士a:a     謎の使者

兵士b:b     金次

男の子:bo   椎名円子

女の子:gi   MIA

 


−黄金国・城内レオンの部屋−


SE  鳥の鳴声


SE  衣服、ベッドの布音


SE  窓を開ける音

 

re01 : もう朝か…最近、よく眠れないな…


re02 : 王女の命令で城の兵士達が隣の国、緑の国【グリーンビレッジ】を滅ぼしてから20日【はつか】が過ぎようとしている。
         予告なしの攻撃だったにも関わらず隣国の兵士の立ち上がりは思ったよりも早く、8割方侵略した後のこりの2割を制圧するのに、
           思った以上の兵力と時間を要してしまったことは誤算だった。
           それでも、隣国が諦めるのも時間の問題で、緑の国【グリーンビレッジ】は戦にしては異例の早さで滅びた。
           その様子をなんとなく他人事のように見ていた俺は、正直、隣国が滅びた、という報告を聞いてもどうも思わなかった。
           それは、滅ぼせ、と命令を下した王女も同じようで、興味はすでに薄れていた。


re03 : 戦って…こんなものなのか……あ、やばい、王女を起こす時間だ。

 


SE  扉の開閉音

 

 

 

−リンアンの部屋−

 

 

SE  扉をノックする音


SE  扉の開閉音

 

re04 : 失礼します、王女。お目覚めのお時間で…あれ?

ri01 : おはよう、レオン。

re05 : お、はようございます…

ri02 : なぁに、レオン、変な顔。

re06 : いや、今日は雨でも降るのかと…

ri03 : 何言ってるのよ?今日はこんなに良い天気でしょう?

re07 : 王女が…起こす前に起きてることが意外で…

ri04 : 私だっていつまでも子供じゃないもん。

re08 : …子供じゃない人は嫌いな食べ物をわざわざ俺に食べさせたりしない、

ri05 : 何か言ったかしら?

re09 : いや。

ri06 : ねぇ、レオン、今日は良い天気よ!お散歩行きたいわ、お散歩!

re10 : 王女、今日も職務がたくさん…

ri07 : いつもいつもそればっかり!そんなの他の大臣にでも任せれば良いのよ。

re11 : 王女こそいつもいつもそればっかりですよ!大臣じゃ出来ない職務もあるから王女に言ってるんじゃないですか。

ri08 : こんなに良い天気なのにー…

re12 : 職務が終われば散歩だって行けるんです。

ri09 : 終わるような量かしら?

re13 : そこまでためたのはどなたです?

ri10 : あぁ言えばこう言う。もう、レオン、女の子に嫌われるわよ。

re14 : とにかく、職務が終わらない限り散歩は無しです。

ri11 : んー、もーう!分かったわよ、分かった!やるわよ、やれば良いんでしょ?

re15 : ご理解頂けて良かったです。

ri12 : その代わり、今日のおやつはブリオッシュね。

re16 : 了解いたしました。

ri13 : 私が焼くわ。

re17 : え、王女が…?

ri14 : もう焼き方も覚えたもの。職務の息抜きよ、息抜き。

re18 : …分かりました。その息抜きが長くならないように注意してくださいね。

ri15 : はーい。

 

 

OP

 

 

ri16 : 悪ノ人生、第九話。

re19 : So, we are twins.

 

 


−丘−

 

SE  鳥の鳴き声

 

re20 : 今日はアッシュ、いないのか…まぁ、毎日家出してるわけじゃないか…


re21 : この丘で一人って久しぶりかも…昔は一人できても必ずサリーかトレニア先生が来てたし、今はアッシュがいる…
           そういえばこの前、アッシュ、変なこと言ってたな。

 


回想((出来るなら…これから暫く異国へ旅行してください。))

   ((この国はもうすぐ…いえ、なんでもありません。))

 


re22 : この国が…何だったんだ?…そういえば、最近、反乱勢力の情報が入ってこないけど、まさかそれと関係が?
           でも、だとしたらどうしてアッシュはそれを…それに、もし、そうだとしても何であんなこと…

 


re23 : あー、分かんない!

ri17 : 何がよ?

re24 : え…あ、王女っ?!

ri18 : レオンったら、こんなところで何、百面相してるの?とっても変な人に見えたわよ。

re25 : どうして王女がこんなところに?!誰かと一緒に来たんでしょうね!

ri19 : まさかー。一人で来たわよ。

re26 : なっ、貴女って人はー…自分の立場分かってんのか!

ri20 : 分かってるから市民と同じ格好して来たのよ。それに、お城から抜けるのなんて得意だもの。
          昔は毎日のように抜け出していたし。

re27 : でも、今は情勢が不安定だから街も危険で!

ri21 : あら、無事よ?

re28 : あー、もう…

ri22 : それに、ここにレオンがいるなんて思わなかったのよ…ちょっと一人になりたくて、ここに来ただけだもの。

re29 : 職務は…?

ri23 : 終わらせたわよ。

re30 : えっ、本当に!

ri24 : …半分…

re31 : …それだけでも進歩だよな、うん、進歩、進歩…

 

 

SE  鳥の鳴き声

 

 

ri25 : 懐かしいわね、ここ。

re32 : え、覚えて…

ri26 : レオンとよく遊んだわ。

re33 : 俺、と…?

ri27 : 何、忘れちゃったの?あ、あと、レオンの家庭教師のトレニアって人とうちの専属看護士だったアイリスも一緒だったわね。

re34 : サリーは…?

ri28 : サリー?

re35 : やっぱり、まだ、忘れてるのか…

ri29 : 忘れてる?何のこと?言ってる意味が分からないんだけど…

re36 : いや、なんでもないです。

ri30 : ふーん…ねぇ、レオン。

re37 : 何ですか?

ri31 : 私、いつまで職務しなきゃいけないの?

re38 : いつまでって…

ri32 : ずっと?ずっとこんなことしなきゃいけないの?ずっと普通の女の子の生活できないの?

re39 : 王女…

ri33 : …なんて。間に受けないでよ。今更王女の職を下りるつもりなんてないし。
          それより、レオンはどうしてここにいるのよ?レオンこそサボり?

re40 : 違います!俺は人と会いに…

ri34 : 人?お友達?

re41 : え、えぇ、まぁ…

ri35 : 見当たらないけれど。

re42 : 別に約束してないから。

ri36 : は?

re43 : いつも適当にここに来れば大抵いる奴だから。わざわざ約束なんかしてないんですよ。
          来たかったら来るし、相手もいたかったらいる、って感じですから。

ri37 : 不思議なお友達ね。
          でも、驚いたわ。レオンにもお友達がいたなんて。

re44 : ちょっと失礼ですよ、それ。どういう意味ですか。

ri38 : そのまんまの意味よ?レオン、ずっと私の傍にいて、お城にいるんだもの。
          お友達なんていつの間に?

re45 : この丘にたまたま来たら、たまたまいた。それだけのことです。

ri39 : ふーん…ねぇ、レオン、私も会ってみたいわ。そのお友達に。

re46 : 今日は来るか分かりませんよ。

ri40 : じゃあ、明日も来るわ。

re47 : …こうなると言っても聞かないか…はいはい、それじゃあ、また今度来ましょう。
          それより雲行きが怪しくなってきましたからそろそろ戻りましょう。

ri41 : あら、本当…降るかしら?

re48 : 最近多いですからね、雨。

ri42 : この前のは雨っていうより嵐よ。

re49 : それじゃあ、荒れる前に戻っておやつの時間にしましょう。

ri43 : やった、息抜き、息抜き。

re50 : 長い息抜きですね。

ri44 : 嫌味ったらしい男は嫌われるわよ?

re51 : しおらしくない女は嫌われるぞ?

ri45 : …帰るわよ、レオン。

re52 : はいはい。

 

 

SE  足音

SE 鳥の鳴声

SE  足音

 

 

as01 : 鳥がざわついてますね…雨、降るでしょうか…


 

as02 : レオンくん来てない、ですよね…本当に異国に行ってくれてると良いのですが…

 

 

 

 

−反乱軍基地−

 

 


ze01 : アッシュ、どこに行くんだ?

as03 : あ、ゼロさん。いえ、ちょっと街を見てこようかと。

ze02 : 早く戻れよ。今日、なんだからな?

as04 : …分かってます。

ze03 : …アッシュ、お前、何か隠してないか?

as05 : え?…やだなぁ、ボクがゼロさんに何を隠すって言うんです?

ze04 : …何もないなら良い。

as06 : ねぇ、ゼロさん…ボク達は正しいんですか?

me01 : 分からないわよ、そんなこと。

ze05 : メイリー。

as07 : 軍団長…

me02 : 結局国民を巻き込んで、私達がしようとしてることは戦よ。
             平和が一番だって願っておきながらそれと真逆のことをしようとしてることは事実。
             それでも、私は信じてるの。

as08 : 何を?

me03 : 未来にある平和。今より良い世界。

ze06 : アッシュ、何を思っているのかは知らないが、俺達は結局、正義をかざしたエゴイストだ。
            だが、エゴイストも、勝てば正義になる。平和を作れば、ヒーローだ。

as09 : ゼロさん…

ze07 : 何だ?

as10 : 相変わらず難しくて頭、爆発しそうです。

ze08 : だろうな。お前、そういえば街を見てくると言ってたな。

as11 : はい。

ze09 : だったら見てこい。街の現状とその原因。国民の顔を、な。
           それから、聞けば良い。お前の中の天秤に。何がお前にとって正しいのか。

 

 

 

−丘−

 

 

as12 : ボクの中の天秤……

 

 


SE  ぽつ、ぽつ、と雨が降り始める

SE  足音

SE  激しくなる雨、風

SE  雷

 

 

 


−反乱軍基地−

 


me04 : ここに集いし我が同胞達!時は来たわ。今まで独裁に独裁を重ねてきたアシュビッツ家を滅ぼす時が!
            アシュビッツの勝手でどれだけこの国の民が苦しめられたか…
            ここにいる誰しもが大切な友人、恋人、家族を失い、全てを失った者もいる。
           今こそ、アシュビッツを滅ぼし、新しい時代を始める時よ!
           立ち上がれ、黄金国【ゴールデンランド】の民よ!

 

SE  群集の歓声

 

me05 : 新しいものを作るにはまず、古いものを壊すのよ…ゼロ。

ze10 : ああ。突撃準備に入れ!各自割り振られた場所で待機!合図と共に一気に城に雪崩れ込むぞ。

 

SE  群集の歓声

 

ze11 : カイン、武器の準備を。

ka01 : すでに出来ています。各自取っていってください。
           整備も仕上がってます。火縄を使うものに関しては湿気に弱いので、防水性の布をかぶせたまま移動させてください。

ze12 : 短い準備期間にも関わらずよくこれだけ整えたな…

ka02 : アシュビッツを滅ぼすためですから…

ze13 : あぁ、そうだな。それじゃあ、武器の管理は任せたぞ。

ka03 : はい。

 

SE  足音

 

ka04 : ミシェル…君のために俺は戦うよ。
           そうだ、これが全て終わったら、一緒に青の国【ブルーアイランド】に帰ろう。
           案内するから…俺が、色んなところを案内するから…なぁ、ミシェル…

 


SE  雷鳴

 

 

 

−城内−

 

 

ri46 : きゃっ!

re53 : やっぱり荒れましたね…

ri47 : もう、せっかく美味しくブリオッシュが焼けたっていうのに!これじゃあ気分が滅入っちゃうわ。

re54 : それにしても本当に、今日はいつもより数段綺麗に焼けましたね。

ri48 : ほんとに?ふふ、レオンよりも上手?

re55 : あぁ、はいはい、お上手です。おめでとうございます。

ri49 : なんか投げやりね…それより、レオン、そこに座って、一緒に食べましょうよ。

re56 : 王女、わたくしは召使ですので、

ri50 : 堅いことはなしなし。それに、私が焼いて私が食べるんじゃ味気ないわよ。誰かに食べてもらわなきゃ。

re57 : …それでは、失礼して…いただきます。

ri51 : はい、召し上がれ!どう?どう?美味しい?ちゃんと焼けてる?

re58 : ちゃんと焼けてますよ。それに…冗談抜きで俺より美味い…

ri52 : 練習した甲斐あったわ!

re59 : まったく…その練習する時間を少し職務にあてればもっと自由時間も増えるのに…

ri53 : 良いじゃない。レオンに美味しいもの食べて欲しかったんだもの。

re60 : …ありがとう、リンアン。

 


SE  城門を丸太で壊そうとする音

 


ri54 : 何の音?

re61 : 騒がしいな…

 


SE  扉を開ける音

 


wo01 : レオン様っ、王女様っ!

re62 : 一体何があったんです?

wo02 : 国民が…反乱勢力が城に攻め入ってきました!その数、数百をゆうに超えています!

re63 : ま、さか…そんな…

 


re64 : そうか…もう、無理だったのか…

 

 


回想((出来るなら…これから暫く異国へ旅行してください。))

   ((この国はもうすぐ…いえ、なんでもありません。))

 

 


re65 : この国はもうすぐ、崩壊する…そう言いたかったのか?アッシュ…

ri55 : レオン!

re66 : 城内の皆に急ぎ伝えてください、今すぐこの城を抜け出せと!

wo03 : しかし、城は全て囲まれていて…

ri56 : 大丈夫よ。私の部屋に地下に続く隠し通路があるわ。

wo04 : え…

ri57 : いつもそこから抜け出してたんだもの。
        少し離れた丘に近い場所に抜けられるようになってるわ。

re67 : 早く全員に伝えてください!そして、無事に逃げて!

wo05 : 王女様とレオン様は…

re68 : 大丈夫です。こちらは俺がなんとかします。

wo06 : はいっ。

 

 

SE  扉を閉める音

 

 

re69 : 王女、行きましょう。

ri58 : どこに?

re70 : 良いから!

 

 

SE  扉の開閉音


SE  足音


SE  扉の開閉音

 

 

ri58 : レオン、レオン!一体なんなの、レオンの部屋なんかに連れてきて…早く私達も逃げないと…

 


SE  棚を開ける音

 


re71 : これを、ついたての裏で今すぐ着て。

ri59 : これ、は…?

re72 : 俺の服。外に遊びに行く時用のだからちょっとぼろいけど、これならばれない。

ri60 : ばれないって、何が…

re73 : リンアンが王女だってこと。ほら、逃げるなら変装しなきゃ。

ri61 : あ、ええ、分かったわ!

re74 : それから、今着てる服をこっちに。

 

SE  布の音

 

ri62 : あら、ぴったり…レオンってば成長してないの?…って、何、してるの…?

re75 : 王女の格好してんの。

ri63 : な、んで?

re76 : 似合うだろ?

ri64 : なんで、そんな格好!

re77 : 地下に通じる隠し通路なんかすぐにばれる。
           誰かが城で時間稼ぎしなきゃいけないんだよ。

ri65 : まさか、時間稼ぎの役をレオンが…?

re78 : 双子だから、絶対ばれない。

ri66 : そんな問題じゃないわよ!嫌よ、嫌!レオンも一緒に逃げるの!

re79 : 我が侭言うな!…リンアン、よく聞いて。

ri67 : 嫌、嫌よ、嫌、嫌、…っ

re80 : リン!君は王女で、俺は召使なんだ。王女を守るのが召使の役目で、王女を守るためなら俺はどんなことだってする。
           体だって張るし、悪にだってなるし、身代わりにもなる。

ri68 : どうして…ずっと一緒だって言ったじゃない!

re81 : 一緒だ。何があっても、だって、俺達は双子なんだから。
           生き別れになってもこうやってちゃんと出会った。そういう運命だから。
           リンアン…君がどこかで笑っててくれれば、俺はそれで良い。

ri69 : レオン…

re82 : 時間が無いっ、行くぞ!

 

 

SE  足音

 

 

re83 : ほら、逃げて。この隠し通路のことはリンアンが一番分かっているんだろう?

ri70 : 嫌よ、いやよ、イヤヨっ!

re84 : 頼むから…俺の最初で最後の我が侭だ。リンアン、逃げてくれ。

 

 

SE 城門を丸太で破壊する音

SE  群集の歓声

 

 


re85 : 早くっ!

ri71 : レオン、レオン!!

re86 : さようなら、リンアン…ボクの可愛い双子。

 

 


SE  隠し扉を閉める音

 

 


re87 : さようなら…

 

 


SE  足音

SE  扉を開ける音

 

 


a 01 : 見つけたぞ!軍団長に報告!

b 01 : リンアン=ミラー=アシュビッツを見つけた!

a 02 : アシュレイさん、こっちです!

 

 

SE  足音

 

 

as13 : 軍団長には?

a 03 : 先ほど、ミックが伝えに走りました。

as14 : ゼロさんにも伝えてください。

a 04 : はい。

as15 : それにしてもこんなに城が手薄になっているとは思いませんでした…
           どこへ逃がしたのです?リンアン=ミラー=アシュビッツ王女。
           ……お、うじょ…?

a 05 : アシュレイさん?

as16 : …ボクが王女を捕縛したと伝えてください。
           このまま牢に連れて行く、と。

a 06 : あ、はい。

 

SE  足音


(暫く沈黙)


SE  アッシュの足音

 

as17 : 集団でどこかに旅行にでも行かれてるんですかね?
           それとも、この危険を察知して逃亡されたとか?
           ……話しませんか…そりゃ、そうですよね…声を出したら、さすがにばれてしまいますもんね。
           レオンくん。

re88 : なんだ、もうばれてたんだ。

as18 : 何をしてるんですかっ!!
            君は、リンアン=ミラー=アシュビッツじゃない!こんな格好でこんなところにいたら、どうなるかくらい分かっているでしょう!
            それとも君は死にたいんですかっ!

re89 : こらこら、仮にも女の子のドレスの胸倉つかむってどうなの、アッシュ。

as19 : 何、のんきなこと言ってるんですか…今の状況、理解なさってますか?

re90 : あぁ。俺は城内の皆を逃がして、王女の格好して、お前らに捕らえられる。

as20 : まさか、時間稼ぎのおつもりですか。

re91 : それと、身代わり。アシュビッツの王女が死なないとお前ら、終われないんだろ?

as21 : レオン、くん…

re92 : 大丈夫、俺は王女じゃないけど、アシュビッツの者だから。

as22 : どういう、意味ですか…

re93 : 俺の本当の名前はレオン=ミラー=アシュビッツ。
           王位継承権を持たない、捨てられた王女の双子のキョウダイ。この国のトップシークレット。
           それにしてもよく気付いたな、俺だって。ばれない自信あったのに。
           でも、驚いたな…アッシュ、お前、そっち側だったんだな。

as23 : ボクは、ボクは…っ

re94 : アッシュ…

as24 : っ、逃げて、くださいっ、

re95 : 無理だよ、アッシュ。それはお前が一番よく分かってるんだろう?

as25 : でもっ、囚われたら最後、貴方に未来は、

re96 : 頼むからそれ以上何も言わないで俺を捕まえて…これが俺の選んだ道だから。

as26 : レオンくん…君は…君の天秤は…そっちに傾いたんですね…

re97 : あぁ。

as27 : それが君の願いなんですね。

re98 : あぁ。

as28 : 君の願いと君の命…また、ボクは大切な人を…

re99 : 行こう、アッシュ。俺はもう、決めたんだ。俺の運命を…

as29 : …リンアン=ミラー=アシュビッツ、貴女を地下牢へ連行します。

 

 

 


−地下牢−

 

 

 


SE  牢の鍵を閉める音

 

 

b 02 : これでこの国も平和になるな。

a 07 : でも、今後、どうなるんだ?

b 03 : さぁ?軍団長が治めるんじゃないのか?

a 08 : ゼロさんの可能性もあるぞ。

b 04 : どっちにしろ、もう、アシュビッツ家に苦しめられることはないんだ。

 


SE  足音

 


as30 : お2人とも、交代します。

a 09 : アシュレイさん?え、でも、まだ交代の時間じゃ…

as31 : ボク、今、暇なんですよー。ゼロさんも軍団長もかまってくれなくて!

a 10 : は、はぁ…

as32 : それに、休んでらっしゃらないでしょう?どうぞ、ここはボクに任せて休んでください。

b 05 : そうですか?それじゃあ、

a 11 : お願いします。

 


SE  足音

 


as33 : 明日の午後3時…教会の鐘が鳴ると同時に君は処刑されます。

re100: そっか。思ったより早かったな。

as34 : 国民が、騒いでいるらしいですから。

re101: 嫌われてんなぁ、アシュビッツも。

as35 : 随分とあっさりしてますね。

re102: 選択肢のひとつとして考えてはいたから。

as36 : そうですか…

re103: ねぇ、アッシュ。空気読まずに雰囲気、ぶち壊してくんないの?

as37 : …難しいですね。

re104: ま、この状況だったらそーだよなー。
            アッシュ、隠し通路ってもうばれた?

as38 : まだです。
            ボクは知ってますけど。

re105: あ、やっぱり?

as39 : 誰にも言わないから安心してください。
            言ったら、君がここにいる意味が無くなってしまいますからね。

re106: ありがとう。
            ついでにもう一個お願い、あるんだけど。
            隠し通路がさ、見つかったとしても、追わないで欲しいんだ。
            死ぬのは俺だけで十分だからさ。

as40 : …分かりました。

 

SE  足音

 

re107: あれ?もう行くのか?

as41 : 今から暫くの間、ここには誰も来ません。
            ボクはいつも通りお仕事サボって、遊びに行ってきます。

re108: アッシュ…

as42 : もし、レオンくんが行く先でボクの師匠に会ったら、よろしく言っておいてください。

re109: 師匠、どんな人?

as43 : んー、ボクみたいな人。

re110: ははっ、分かりやすい。

as44 : それじゃあ、レオンくん。

re111: あぁ、また、な?

as45 : はい、さようなら。

 

SE  足音

 

re112: はは、素直な奴。またな、って言ってくれなかったな。

 


re113: アッシュに処刑の時間を聞いても不思議と俺の心は乱れなかった。
            死ぬのが怖くないのか、と聞かれれば首を縦にも横にも振れない。
            ただ、今は本当に何も考えていなくて…だから、自然と落ち着いている。
            でも、この静かな牢屋で一人っきりで思い出すのは、賑やかだったあの日のこと。

 

 


−過去・城内−

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

sa01 : ガクトさんはいつも体張ってるけど、怖くないの?

ga01 : なんだ、サリー、珍しいな。

sa02 : んー、なんとなく気になっただけ。この前も他国に戦に行って怪我をしたでしょう?

ru01 : あの時の怪我はさすがに心配しましたね…

ga02 : ルナ!心配してくれたのか!

sa03 : それで、怖くないの?

ga03 : んー、怖くないのかって聞かれると答えに困るなぁ…
            なぁ、レオン。

re114: どうして俺に聞くんですか。俺、戦に行ってないですけど。

ga04 : レオンは一番近くで体を張って王女を守ってるから。

re115: あぁ…でも、俺は命が危険にさらされた覚えないですから。

ga05 : あぁ、そうか。怖くないんだ。

sa04 : え?

ga06 : 戦のときは何も考えてなくてな。ただ、城に帰ったら一番にルナに「ただいま」と言おう、とか、
            サリーと王女のところに報告に行こうとか、レオンにちょっかいをかけに行こうとか、
            未来のことしか考えてないんだ。

re116: 毎回それで、怪我してても俺のとこ来てたのか…

sa05 : ふーん、怖くないんだぁ…

ga07 : 怖くはないが、たまに不安になるぞ。

ru02 : あら、不安に?ガクトさんが?

ga08 : 帰っても城がなかったら、皆がいなかったら、と思うと不安になるな。

sa06 : あ、それはね、私も思う!起きて、王女がいなかったらヒヤッとするもん。
            まぁ、大抵お庭にいるんだけど…

re117: それは俺もヒヤッとするな…

ru03 : ふふ、結局、皆が皆を大事に思ってる、ってことですね。

sa07 : だって家族だもん。

ga09 : 帰るべき家だからな。

ru04 : 今はここが、私達の居場所ですからね。

sa08 : レオン?どうかした?なんか、変な顔してる。

re118: え、あぁ、いや、皆がそう思ってることがなんか意外で…

sa09 : そう?

re119: そっか、そう思ってたの、俺だけじゃなかったんだ…

sa10 : レオンは、昔っから私の弟!

re120: え、俺のほうが下?

sa11 : だって、私のほうが年齢的にもおねーちゃんだし。

re121: 精神年齢は俺のほうが上だろ。

ga10 : どっちもどっち。

ru05 : ですね。

 


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 


−地下牢−

 


re122: あぁ、そうか…ガクトさん、こんな気分だったんですか…
            城は無くなってしまうけれど、新しい俺達の居場所、そっちにあるかな?
            俺が行ったら、ちゃんと迎えてくれる?
            そしたらさ、今度は…リンアンが来るのを俺達が待つんだ。
            それで、全員そろったら、また笑って、くだらないこと言い合って、賑やかに過ごすんだ。
            俺は…俺達はいくらでも待つからさ、リンアン、君は、ゆっくりおいで。
            たくさんの時間をかけてたくさんのことを見聞きして、普通の女の子としてたくさんの人に出会って、
            その思い出話をたくさん、たくさん聞いてやりたいから。
            いくらでも待ってるよ。だから…

 


re123: 生きろ、リンアン。

 

 


SE 鐘の音

 

 

 


−ハイクの家−

 

 


bo01 : …リー、サリー?

ri72 : えっ、あ、ごめんなさい、ぼーっとしてた。

gi01 : サリー、具合でも悪い?

ri73 : 大丈夫よ、ちょっと昔のこと思い出しちゃって。

bo02 : ふーん…あ、サリー、ハイク、教会の鐘が鳴ったから僕達帰るね。

gi02 : また明日、続き、教えてね。

ha01 : ええ、明日には完成させましょうね。

gi03 : それじゃあ、また明日ねー。

bo03 : ばいばーい。

 

SE  扉を閉める音

 

ha02 : サリー、本当に大丈夫?具合が悪かったら、言ってね?

ri74 : 大丈夫よ、ハイク。心配してくれてありがとう。

ha03 : 良いのよ。そうだ、今日は温かいスープ作りましょうか。

ri75 : それじゃあ、ハイクのパンも食べたいわ。

ha04 : 任せて。美味しいの焼くわ。

 


SE  雨音

 


ri76 : あ、降りだした…

ha05 : あの2人、大丈夫かしら?

ri77 : 家、近いから大丈夫だとは思うけど…

ha06 : 荒れなきゃ良いけど。

ri78 : 本当に…荒れないと、良いわね…

 

SE  雨音

 

 

ENDING